だいたい忘れる

日々のこと。好きなものについて書きます。

さよーなら みなさん

最近読んだマンガでドシンときたもの。

西村ツチカ 作「さよーなら みなさん」

 

 

主人公の木村みなちゃんは、スーパーでバイトしている自転車に乗れない女子高生。

夜、みなちゃんがバイト先の店長にデートに誘われるところから始まって、そこから翌日、学校に登校してまたバイト先に行くまでの間、いろんな種類の変な男に絡まれて話が進行して行く。一話につき、一厄介男で完結するが、風が吹けば桶屋が儲かる的に、なんとなく前の話がきっかけで次の話が起こる。

 

読み終わってとにかく、この漫画をお勧めしたいとブログを書いてしまった。

とにかく絵の構図がとても面白くてぱらぱらとページを眺めるだけでも惚れ惚れする。

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作中では、みなちゃんの一人称や心の声は一切描かれないのも面白い。読者は感情移入することなく、みなちゃんを見守る形で一緒に冒険をすることになる。これに関してはあずまさんの「よつばと!」と同じ構造と言えるかも(よつばと!も主人公よつばの一人称がない) 。

さらに、みなちゃんの目は空虚。全てを吸収するブラックホール。絡まれる厄介男たちをなんとなく吸収してしまう力がある。でも、吸収なのでそこに心の交流はあまりない。あくまでクール。そこがいい。

 f:id:Suliformes:20171109213024j:image自殺しようとする同級生を見つめるクールなみなちゃん。

 

私が特に好きなのは4話目の「田中、大爆発」

目立たないクラスメイトの"田中くん"にみなちゃんが絡まれる話。

田中くんが作ったペットボトルの蓋で作られた自爆ボタン。このボタンを押すと何処かで誰かたまたま死ぬという。このボタンを託されるみなちゃん。なんとかして、みなちゃんの関心を引こうとする田中くん。でも、そんな田中くんの突拍子も無い行動とは無関係に、みなちゃんは田中くんの奥二重に気付いたりする。

田中くんは関心を持って欲しい、もっと見て欲しいと思って生きているけど、実はその願いは叶っているというすれ違いの切なさがとてもいい。

 

こういうすれ違いは日常生活でも割とよくあると思う。加えて、誰か関心を持って欲しいと思いながらも、相手のことは考えたくないという不条理な思いを抱いてしまうこともある。

そんな不条理な考えに巻き込まれてくれながらも動じるクールに吸収してくれるみなちゃんみたいな子がいたらどんなに救われるだろう。

 

「さよーなら みなさん」は漫画好きにはたまらない漫画力のおもしろさとともに、人間の不条理さを吸収してくれる器の広さがとても魅力的な作品だ。